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執筆者の写真百束 比古(HYAKUSOKU HIKO)

その16  レーザーによる美容医療の登場

1.レーザーの登場と医療への応用

レーザー光線の登場はある意味医療の革命であったと言える。その医療における用途には、熱による組織の無血切断に始まり、波長の選択による色素病変の治療、コラーゲンの熱破潰などの美容医療にまでの進出に至った。それは、外科、耳鼻科、眼科、歯科など多岐に亘る診療科で利用されるようになった。レーザーは、当初は戦争での殺人兵器として開発された。約60年前にメイマンが最初にルビーを利用して造り出した。レーザー(LASER)とは、

— Light(光)

— Amplification by(増幅)

— Stimulated(刺激)

— Emission of(放出)

— Radiation(放射)の頭文字で構成された造語であり、直訳すると、「放射の誘導放出による光の増幅」ということになる。

2.ルビーレーザーの問題点

例えば、ルビーレーザー光線はメラニンと黒い色素に非常によく吸収される一方、皮膚の主成分であるコラーゲンには余り吸収されないので、レーザーを照射した皮膚はメラニンだけが熱破壊されてコラーゲンは破壊されない。そこでこの性質を利用してしみやあざの治療に使用されるようになった。

しかし当初のルビーレーザーではパルス幅をコントロールすることが出来ず、必要以上にメラニンに熱を与えた結果メラニンの熱が周囲のコラーゲンにまで伝わって皮膚がやけどを起こすことが多くあったようだ。

3.Qスイッチレーザーの考案

そこで、1990年頃にパルス幅をとても短い時間(数万分の何秒とか数十万分の何秒というレベル)でコントロールできる、Qスイッチという装置が開発され、皮膚には殆どやけどを起こすことなく、あざやしみを選択して治療することができるようになったのである。

4.脱毛への応用

次にこれらのレーザーを使用しているうちに、2つのことがわかったのである。

その1つは「レーザーの種類と光が出ている時間(パルス幅)を調節することでいろいろなものにレーザーのエネルギーを吸収させることが出来る」というものである。これは米国ハーバード大の皮膚科医、ロックス・アンダーソン博士が提唱した「選択的光熱融解」という学説に由来する。具体的に一例を挙げると、例えば我々の毛には黒い色素があるが、毛を生やす元の細胞すなわちこの毛母細胞にはメラニン色素はない。したがってこれを直接の標的にしてレーザーで破壊することは出来ないのである。しかし、少し長めにレーザー光を照射すると、毛に吸収された熱が毛の周囲にある毛を作る「幹細胞」に伝わり(熱伝導)これを破壊する。これが現在広く行われている「脱毛レーザー」の原理である。


下図様々な脱毛レーザー機器。



脱毛前。


脱毛後。

5.シワ取りへの応用

もう一つは、太田母斑と言う顔に出来る青黒いあざをノーマルパルスのルビーレーザーで治療していた時代、あまり出力を強くするとやけどになるので、やけどにならない程度の出力で何回も何回もレーザーを照射していたところ、レーザーを照射していた側の皮膚の「きめ」が細かくなり、またしわもなくなってきた。当初は何故このような現象が起こるのか分からなかったが時代が変わり、人々が「アンチエージング」すなわち「抗加齢」という病気ではないものまで治療の対象として求めるようになったとき、この現象は「しわ取りレーザー」の原理として注目を集めるようになった。

6.レーザーによるコラーゲン増生の原理

現在では何種類かのレーザーがこの目的で開発されて、実際に使用されている。つまり皮膚にある程度の強さの光を照射すると、皮膚の表面を冷却したりするなど色々な方法を取ることによって、皮膚の表面はやけどをしないけれど皮膚の中では軽いやけどを起こす程度の熱を与えることが出来るようになった。このような熱は天然界には当然存在しないから我々の皮膚は皮膚の中の方にこれだけの熱が加わっているのだから皮膚の表面はもっと熱が加わり、きっとやけどをしているだろうとある意味勘違いをして(?)、やけどを治そうとコラーゲンをせっせと作り出すようになる。この結果皮膚のきめが細かくなったり、こじわやたるみがとれたりするようになるのである。



レーザー光線の性質を示す。通常光をプリズムに通すと虹をつくるが、レーザー光は曲がるだけで直進する。これはレーザー光が散乱光の波長の一部だけを取っているからである。

次回はレーザー以外の機器による抗加齢治療について述べる。


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