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執筆者の写真百束 比古(HYAKUSOKU HIKO)

その17 小児熱傷の形成外科的治療について

小児はそれからの成長があるため、成人の熱傷再建とは全く異なる。熱傷によって生じた瘢痕・瘢痕拘は常に成長を考慮して対応する必要がある。言い換えれば、熱傷後の瘢痕拘縮が骨の成長を阻害するような身体の成長障害の原因になったり、精神的な非社会的要因すなわちイジメや不登校の原因にならないように支援しなければならない。

殆どの小児熱傷は、親や大人の不注意によるものであるが、ごく一部には意図的な即ち虐待や故意によるものがあることを常に意識しなくてはならない。勿論証拠があれば警察などに通報するが、多くは醸し出されるだけで実際は不明確である。

私の経験を語ると、5歳位の熱傷女児の付添に熱心であった父親が実は放火犯であったという嘘のような本当な信じ難い例もあったし、全身熱傷女子児童の母親が虐待で逮捕されたこともある。

このように信じられないような経験から私の見解を言うと、子供の熱傷は勿論親の責任でありまた社会の責任でもあると思う。われあれ形成外科医は外科医という職人でもあるが臨床心理士のような役目もあり、その子供の一生を受け持つ覚悟で心身に亘る治療に携わらなければならない。

以下に代表的な症例をエピソードを交えてお見せする。

女児の胸部熱傷は乳房の発達を重視する。



3歳時の火炎による熱傷。


10才時に右乳房下に皮弁を移植し、乳房の発達を助けた。


熱傷後の肥厚性瘢痕の持続。


4歳時の熱傷後肥厚性瘢痕が年余を経ても不治であった。


肥厚性瘢痕を切除して電子線を分割照射した1年後。


18歳時の状態。乳房の発達は対称的で良い。


女児の足の囲炉裏によるⅢ度熱傷。他医に切断を勧められたが温存を図った。


受傷時の状態。左足の深達性熱傷。


右ふくらはぎからのクロスレッグ法で踵を再建。


10歳時の状態。


成人して、美容師になりその後結婚され家族をもった。

乳児期に片足を失っていたら違う人生だったかも知れず、足の温存ができて良かったと思っている。


乳児期の焚き火による顔面熱傷。全顔面の深達性熱傷に植皮を施行した。


瘢痕拘縮の形成手術などで10数回の手術行して成人した。

化粧した状態。温厚な女性に育ち語学学校に通っていたと記憶する。


小児の炊飯器の蒸気による熱傷は指の屈側が殆どである。


受傷後早期(1か月以内)の鼠径部からの全層植皮。



5年後の状態。鼠径部の瘢痕は目立たない。皮膚採取部位はややハイレグにしてある。

これも女児の将来の流行を考えての配慮である。


それでは次回は、手のヒートプレス損傷について述べる。

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