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執筆者の写真百束 比古(HYAKUSOKU HIKO)

その18 A型ボツリヌス菌毒素とヒアルロン酸

切らない美容医療が流行った原因の一方として、A型ボツリヌス菌毒素とヒアルロン酸がある。

まずは前者について述べる。A型ボツリヌス菌毒素は商品名ではボトックスTMが有名となっている。主たる目的は、しわとりである。


この薬剤は、第二次世界大戦中アメリカ軍によって生物兵器として研究されたらしい。当初は毒としての利用法が検討されていたが、その後医療の世界への応用がなされ眼瞼痙攣に対する治療薬として開発された。この薬を注射すると、神経と筋肉のつなぎ目での情報の伝達をブロックしてしまう。つまり神経がいくら筋肉に動くよう命令してもその命令が筋肉に伝わらない為、痙攣が起こらないと言うわけである。


A型ボツリヌス菌毒素は局所だけに限って注射すると、これは非常に有効な薬となり得る。たとえば目を大きく見開いて眉毛を上に挙げると、おでこに前頭筋という筋肉の作用で横じわができる。ここにボツリヌス菌素製剤を注射すると前頭筋が動かなくなり、おでこにしわができなくなる。他に眉間のたてじわやいわゆる「からすの足跡」とよばれる目じりのしわに対しても極めて有効である。


問題はこの薬の持続期間がおよそ半年ぐらいと言われていることだ。だから一年に2回程度は治療を受ける必要がある。またもう一つの問題は効果が現れるまでに3日程度かかることであろう。


この薬は特に重篤な副作用と言うのはないが、打ち方によっては眉毛が下がってしまう、表情がなくなる、注射したところに皮下出血が出来る、などの症状が出ることがある。また、頻回にそして大量に打ち続けると体内に「中和抗体」といってA型ボツリヌス菌毒素を中和してしまう物質が作られる可能性がある。


そして現在A型ボツリヌス菌毒素の使用法はますます拡がっていて、たとえば下まぶたの下に注射すると、まぶたをぎゅっと閉じる筋肉が緩むので、目が少し大きくなったり、あるいは口を横上に広げる筋肉のところに注射すると、笑ったときに歯茎が見える状態(ガミースマイル)を治すことが出来る。


そのほかにも、眉毛の形を思い通りに変えたり、あごのいわゆる「梅干」状の凸凹を出来なくしたり、咬筋に注射して「小顔」の印象にしたりもできる。わきの下や手の平に注射すると汗をかかなくなる。



 (左)ボツリヌス菌毒素注入前。        (右)ボツリヌス菌毒素注入後。

次にヒアルロン酸注射について述べる。

最初に 顔に入れるフィラーにはどういうものがあるかについて述べる。

フィラーとは注射で皮下に入れる充填物のことである。


しわとりや凹みの修正には、皮下に異物を注入したり、埋入する方法が、ある程度の效果をもたらすことは確かです。現在最も普及しているのは、コラーゲンとヒアルロン酸でしょうか。どちらも、おそらく半年くらいで吸収され消失してゆくので、その度に注入しなくてはなりません。しかし、その性質こそが、万が一入れ方がうまくいかなくてもどうせ消えるから、と言う言い訳で納得させられてしまうという、医師にとっても患者さんとっても救いになるのです。主に、額のしわ、眉間のしわ、カラスの足跡、下眼瞼の凹み、鼻唇溝のしわ、口唇のしわ、下口唇から顎のしわや凹みに有効です。しかし、注入の仕方をあやまるとしこりになったり、目の近くの血管に注入してしまい目が見えなくなったという報告まであるので、そんなに簡単に考えない方がよいでしょう。十分経験のある医師にやってもらいましょう。コラーゲンとヒアルロン酸の使い分けは医師によって微妙に意見が食い違いますが、どちらを使い慣れているかが実際のところ、好き嫌いになっているようです。どちらも、まれにアレルギーなどの副作用がありますので、この辺も慎重に受けて下さい。


吸収性のフィラーに分類されるもう一つに、ハイドロキシアパタイト(レディーエッセTMなど)があります。しかしこのフィラーは使用法が難しく、シコリ形成や感染などの合併症もあるようなので、経験の浅い医師には注入してもらわない方が無難です。


その他のフィラー例えば、シリコン、アメージンジェルTMダーマライブTMなどは非吸収性のものですので、私はお勧めしません。というより、纏まった量の注入には使用すべきでないと思います。現在これらの非吸収性フィラーによる実害が中国を中心に蔓延しつつあります。我が国でも、一部の先生がこれらを使用されたという痕跡があり、実際に被害を訴えて私を受診した方もおられます。非吸収のフィラーは嚢腫状になったり、異物肉芽腫を形成したりと非可逆性の変化をもたらす可能性があるのでくれぐれもご注意下さい。なお、従来からのコラーゲンは動物から抽出したものですが、最近はヒトから抽出したヒューマンコラーゲンも使えるようになりました。しかしその安全性は未知数です。いずれにしても、体内に注入する材料ですから、それらの安全性については十分に医師に聞いてから受けてください。


次回は顔の生まれつきのくろあざ(母斑)の。形成美容外科的治療について述べる。


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