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執筆者の写真百束 比古(HYAKUSOKU HIKO)

その19 褥瘡の手術的治療

褥瘡は一般的には床ずれとして、長期療養患者に必発の皮膚潰瘍と認識されてきた。私は1980年頃に、非常勤で月1回手術に行っていた会津中央病院で、多くの褥瘡患者に遭遇した。そして患者の疾患や状態で褥瘡もできる部位が違うことを知った。

それは、高齢の寝たきりの患者―仙骨部、足部、肩甲骨部、中高年の寝たきりの患者―両大転子部、下半身麻痺の患者―坐骨部、である。高齢の患者や抗凝固剤を使用している患者はしばしば手術ができないことがある。しかし、それ以外では全て手術の適応がある、というのが自論である。古典的な皮弁の選択は、仙骨部―回転皮弁法や横転皮弁法、大転子部―大腿筋膜張筋(TFL)皮弁、坐骨部―ハムストリング筋皮弁(特に大腿二頭筋皮弁)などである。そして、近年では私の開発したプロペラ皮弁法もより簡単に褥瘡を閉鎖できる方法と認識され始めた。

仙骨部褥瘡の大殿筋穿通枝軸プロペラ皮弁による修復。

左:手術前の状態と皮弁のデザイン。中:皮弁の挙上。右:手術後半年の状態。



薄筋皮弁による坐骨部褥瘡の修復。上左:手術前の状態。上右:皮弁の挙上。下左:術直後。下右:術後半年の状態。


TFL皮弁による大転子部褥瘡の修復。上左:従前の状態。上右:TFL皮弁のデザイン。下左:皮弁の挙上。下右:術直後。


術後半年の状態。

プロペラ皮弁による踵部の褥瘡の修復。


左:術前の褥瘡と皮弁のデザイン。中:前脛骨動脈穿通枝を軸とするプロペラ皮弁の挙上。右:術直後の状態。プロペラ皮弁の回転でできた皮膚欠損部は遊離植皮を行った。


以上代表的な褥瘡修復の手術をお見せしたが、手術の適応は厳正であるべきで、以下の全ての条件を満たすものとする。


1. あらゆる保存的療法が功を奏さないか、その可能性があるもの。

2. 再発が必発の体位しか取れないことが、除外できるもの。

3. 抗凝固剤の服用があれば、それが手術前後に一旦中止できるもの。

4. 手術について本人もしくは家族の理解と同意が得られたもの。

5. 全身状態が手術や麻酔に耐えられるもの。

次回は最終回なので再生医療の魁であった軟骨移植皮弁についてお見せする。

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