山中先生がiPS細胞でノーベル賞を取られたことで更に注目されるようになった、再生医療が形成外科学から始まったといっても多くの人は信じないかもしれない。しかし、1990年代にネズミの背中に耳を作った有名な写真は多くの人が見ているであろう。これが組織工学という再生医療のきっかけになった形成外科の最初の功績で、イーリン・チャオという中国人の形成外科医がアメリカに留学中に成功した正に再生医療の魁であった。その後組織を再生させる細胞として、ES細胞や体細胞由来幹細胞などが用いられたり発見されたりして、山中先生のiPS細胞の発見にいたるのである。ではなぜ、形成外科が組織工学に手を付けたのであろうか。それは、再建手術には元々耳や鼻などの軟骨付きのパーツを作成したりや細い血管を移動して本来血管に乏しかった組織を安全に移植する“Vascular Crane”と呼ぶ手法が用いられていたからである。要するに本来形成再建外科というのは元々なかった組織を作る外科的学問であり、正に再生医療の本質に一致していたからである。これが再生医療という大きな学問的分野になり、医療全体に貢献するようになるとは夢にも思わなかった次第である。
次回では、キズをいかにしてきれいにするかという形成外科の基本について述べる。(写真は耳を作る目的で腕に予め作った耳)
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